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有限会社 小山商店

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フローリングとえんこ板(縁甲板)
フローリングも縁甲板も板を本実加工(下図)したもので、このような実(さね)の形状にすると、釘を雄実の根本の部分から斜め下に打って下地に固定すれば、あとから差し込む雌実は雄実に押さえられるので浮き上がりません。つまり、表面にくぎの頭を出さずにしっかり固定できる、精度の高い造りになっています。
本 実 加 工
雌実(めすざね)雄実(おすざね)

今では縁甲板よりもフローリングという名称が床材としては一般的です。現在の日本農林規格(JAS)によればフローリングはムクの木の一枚物を加工した単層フローリングと、薄くスライスした単板を合板などに上貼りした複合フローリングの2種類に分かれます。長さの規定はありません。縁甲板は単層フローリングの一種に該当します。業界では長さ1.8m以上を縁甲板、それ以下をフローリングと呼んでいます。フローリングとして生産される材種はナラやブナなどの広葉樹が多く、長さを一定にせずに作ります。乱尺フローリングとも呼びます。乱尺の板をつないで1.8mにしたユニフローリングもあります。これらは主に中国や東南アジアから輸入されます。

縁甲板は縁側、つまり外廊下の甲板として使われたのが語源です。昔の建物は寒さから逃れ暖房効率を高めるために部屋が内側にあり、廊下は外側に巡らされていました。暖房設備や断熱材が普及して建ぺい率の方が問題になる現代では、外廊下を持つ住まいはわずかになり、縁甲板の用途としても廊下の板だけではなく部屋の床材として使われるようになっています。

日本における床板の歴史を見ると、縁甲板ではなく、ただの板の間の時代が長期間続いていました。本実加工の縁甲板は釘とセットになって始めて機能するので、釘を1本1本手作りする鍛造釘の時代は釘が貴重品のためあまり普及しませんでした。テレビの時代劇でも床は幅広の板の間になっています。高級建築の場合は床板の裏側に横溝を彫って桟木を食い込ませてそりを止めていましたが、単に板を渡して壁際の巾木で押さえることも多かったと思います。隣り合う板に段差ができるのは当然なので、昼間はともかく、夜にふとんだけで寝るのは辛いために畳が寝具として使われたのでしょう。

大量生産が可能な鋳造の釘は江戸時代に入っての登場です。とはいえ、今でこそ縁甲板の本実は機械で簡単に加工できますが、昔は手作業で作るしかありませんでした。江戸時代の大工さんは1日かかって10枚くらいの本実の縁甲板を作っていたそうで、縁甲板を使えるのは比較的裕福な家でした。縁甲板が一般住宅に使われるのは明治に入って木工機械が普及してからになります。

今では縁甲板よりもフローリングという名称が床用の木材として一般的ですが、前述のように歴史的には縁甲板の方が大先輩です。日本でナラのフローリングがはじめて生産されたのが大正2年だそうで、それまでは桧や松の長尺縁甲板が大半でした。広葉樹のフローリングが普及しはじめたのは1950年代からで、学校などの公共機関に広まりました。1970年代には合板の台板に薄い単板を上張りした複合フローリングが登場して、低価格をアピールして主流になりました。住宅の床が無垢材から単板貼りに移行していったのです。ところが1990年代の後半になると資源不足やホルムアルデヒドの問題から無垢材が見直されて現在に至っています。

フローリングと縁甲板のデザイン上での違いは以外とはっきり出ます。フローリングは巾、長さ共に小さく、継ぎ目が多いのですが、さらに各々を見ると、木目が板によってバラバラになっています。これに対して縁甲板はフローリングよりもはるかに長く、幅も一回り広い上に、木目が板目又は柾目に揃っている場合がほとんどです。

そのため貼り上げた床をやや離れた位置から見ると、フローリングは木目による濃淡がありながらも一定の色調を保った平面に見えます。縁甲板は板目の場合は木目が板のラインに沿ってすっきり伸びていき、柾目の場合はさらにラインと平行に走ります。ややにぎやかなのがフローリング、すっきりして木目を目で追えるのが縁甲板といえるでしょう。


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